第23章公益事業 (企業) の経営

23.1 公益事業の種類と特徴

  1. 種類

    社会インフラを支える事業

    • 電力・・・電力会社
    • ガス・・・ガス会社
    • 下水道・・・自治体
    • 家庭用ゴミ処理・・・自治体
    • 産業廃棄物処理・・・産廃業者
    • 高速道路・・・道路公団(民営化)
    • 鉄道・バス・・・JR、私鉄
    • 通信・放送・郵便・・・通信会社
    等々

  2. 特徴
    1. ①公益事業は、健全な経営体質を求められるほかに、適正な価格での安心、安全を提供する社会的任務を負っていると言える。
    2. ②公益事業が他のビジネスと違う点
  3. 人間生活や経済活動の基盤を支えているので、一度そのシステムが異常をきたすと その影響は極めて大きい。
  4. 税金で事業構築している場合が比較的多い。
  5. 国の基幹に関わる部分が多いので、外資の導入が少ない。
  6. 価格については、は国の認可制が多い。

23.2 グローバル化の影響

通信や放送の分野(市場開放)

民営化による市場の競争原理が有効に働いた例と言える。顧客満足に繋がる。

23.3 エネルギー供給会社の例

電力会社やガス会社は、電気とガスをただ安全に、安定的に提供しているだけでは ない。勿論これは基本的スタンスであるが、さまざな関連事業を展開している。

地域独占のため、一般消費者は他の地域の電力会社やガス会社から提供を受けるこ とはできない。

独占でも価格を上げないで事業が継続できるように経営がなされている。

  1. ガス会社の例

    さまざまなガス燃料機器の開発

    • ガスの消費量を上げる。
    • 安全装置やセンサーの開発により、より安全を提供する。
    • 事業の業務効率化のためのシステムやソフト開発による経費削減。
    • ガス燃料の新たなビジネス展開
    • 各種啓蒙活動による社会貢献
    • 地球環境に優しいエネルギー機器の提供

    開発機器

    • 瞬間湯沸かし器
    • ガスストーブ
    • 工業用燃焼装置
    • 冷媒加熱エアコン
    • ビル用空調装置(吸収式冷凍機)
    • ガスエンジン駆動空調機
    • 燃料電池システム(お湯と電気を提供)
    • 地域冷暖房システム(都市開発対応)
    • 天然ガス自動車
  2. 電力会社の例

    ガス会社との大きな違いは、電気はガスのように大きなタンクにためておきことが できないことである。

    • 発電所で作った電気をいかに有効に使ってもらうか → 夜に発電された電気を 昼にシフトする工夫や機器の開発
    • ガスより効率の高いヒートポンプ式給湯器の開発
    • 地球環境に優しい発電システムの構築 ガス会社が数百社あるのに対して、電力会社は 10 社しかない。
    • 電力会社同士の送電線網は接続されており、不測の事態が生じた場合には互いに電 気を融通できるようになっている。
    • ヨーロッパでは原子力発電大国のフランスがドイツやスペインに売電している。 大企業は自前の発電所で安い電気を作って、電力会社からの使用量を減らすこともし ている。

23.4 その他の事業例

  1. 鉄道事業
    • JRは全国ネットワークであるが、私鉄はローカルである。関西ではJRと私鉄の 競合路線が多いが、関東圏は比較的競合路線は少ない。
    • 接続の利便性や相互乗り入れの推進による顧客サービスの向上化
    • 駅中ビジネスの展開
    • 路線沿線の都市開発
    • 鉄道技術の輸出
    • JRのコンペチターは航空会社
  2. 航空事業

    鉄道事業との違いはコンペチターが海外にもいることである。国内事業だけなら同 業と鉄道が競合相手である。

    米国ではレーガン政権の時代に航空事業の市場参入開放を行って以来、ドラスチッ クに価格が下がった。

    ホテル事業や貨物輸送の強化等多角化の努力はしている。 石油を基とするジェット燃料の代替が効かないのが自動車と大きく異なる。

23.5 公益事業の方向

各国の状況を見ると、民営化しているものと税金で対応しているもの、それぞれ国 の事情によってスタンスの違いがある。要はいかに効率よく経済活動に寄与して国を 豊かにするかと言うことであろう。

社会基盤のシステムを効率的に運営して、安心・安全を安定的に提供するには、民 営化と税金対応の互いの補完スタンスが重要と思われる。


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