第22章/グローバル企業の海外戦略

地球的規模で事業展開するグローバル企業の様々な形態、スタンス、取り組み、リス ク等について解説する。

地球環境にも配慮した取り組みが責任ある企業の使命といえる。京都議定書に盛り 込まれた CO2 削減の数値は国際公約であり、グローバル企業に課された役割は大きい と言えよう

22.1 グローバル企業とは

  1. 地球規模で事業展開する企業

    資源の乏しい我が国は、ほとんどの物を輸入しており、貿易立国として生きるほか にない。 → グローバル化は必然の帰結と言える。

  2. グローバル展開の形態は様々

    ・国内製造 ・海外製造 ・委託製造 ・代理店設置 ・人的派遣 ・業務提携

    対象も物品からサービス、観光、コンサルまで様々である。

  3. グローバル化に乗らない商売

    いわゆる伝統工芸を対象としたものは国内のみの事業に留まる場合が多い。 但し国技とされた柔道が世界に普及したり、相撲が海外から注目されたりしてグロ ーバル化するケースもある。

    ある国の伝統や文化がグローバル化するのは、情報のリアルタイム化や人の行き 来 g がグローバル化したことによる。人の価値観や時代背景が推進力になっている。 → 例えば和食ビジネスのグローバル化

22.2 海外戦略に関して

  1. 世界の市場

    ①北米(ドル経済圏)    ②欧州(ユーロ経済圏)
    ③アジア(日本経済圏)・・・中国、インド等の台頭
    ・BRICs  ・オセニア  ・中近東  ・南米
    ①から③の市場、中でも米国市場を中心に海外展開を図るケースが大多数である これは米国が極めて大きな市場であり、企業にとって大きな収益源となる潜在的魅 力があるからである。

  2. “物”の輸出入額:単位臆ドル(WTO統計(2005 年の一例))
    輸出額:①ドイツ:9707 ②米国:9043 ③ 中国:7620 ④日本:・ 5958 ⑤フランス:4592
    輸入額:①米国:17327 ②ドイツ:7741 ③ 中国:6601 ④日本: 5161 ⑤英国:5012

    世界全体の名目輸出額は 10 兆 1210 億ドルで、途上国の輸出は 3 兆 4450 億ドル で、1/3を占めている。BRICs合計の輸出額は世界の12%を占める。

  3. 海外拠点構築に際しての認識
    • 言葉の問題(現地スタッフとのコミュニケーション)
    • 商習慣の違い
    • 企業文化や価値観の違い
    • 労働スタンスの違い
    • 人種差別や見えざる階級社会の存在
    • 仕事の進め方の違い
    • 誘拐やテロ 等々
  4. 様々な海外展開形態

    例えば製紙会社は安い木材を輸入してパルプを基に紙を作っている。

    原材料を海外から輸入しているが、海外に植林して育てた木を輸入する事業展開 は、地球環境保全の観点からも優れた海岸戦略である。

    → 企業は地球環境を守る社会的責任も負っている。

    グローバル企業にはこれらの義務があると言っても過言ではないであろう。

  5. 海外展開のリスク

    政情不安による撤退

    ・イスラム圏や中南米、アフリカ諸国のカントリーリスクを考慮する必要がある。

    反日感情諸国における企業イメージ、ブランドの低下

    ・悪いイメージが浸透しないように細心の注意を払う必要がある。

    テロや暴動の発生

  6. 下請けメーカーの随伴(製造企業の場合)

    海外展開の段階

    • 全てを日本製で製造する・・・下請け随伴と日本からの部品調達
    • 現地下請けメーカーの育成、教育
    • 現地部分調達

    安い優秀な労働力は勿論のこと、電力やエネルギー供給のインフラ、港湾や空港、 鉄道、道路と言った物流インフラ等がない場所には進出できない!!

22.3 海外展開の深耕

  1. 海外に根付いた段階
    • 部品調達先の多様化
    • 現地化・・・特に人材確保、幹部候補厳選
    • 逆輸出、OUT-OUT
    • 進出元との棲み分け・・・例えば技術開発と製造、設計と製造 等
    • 戦略の一翼を担う位置付け化・・・例えば東南アジア地区は全て中国法人やベ トナム法人に担当させる(例えばある機種の製造拠点化)。
  2. 構築の形態
    • 海外企業のM&A
    • 現地法人の設立
    • 海外企業との合弁
    • 海外代理店契約

22.4 グローバルニッチの海外戦略

ニッチ戦略・・・市場のあまり大きくない隙間展開戦略である。大企業が進出し にくい市場である。


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