第18章/人材育成

企業にとって人材は最も大切な財産である。終身雇用形態から脱却した我が国の 企業における人材教育のあり方等を概説する。

18.1 人材とは

一言で言えば「所属する会社の企業価値を高めることに貢献できる人」であり、 人材(働き手としての材料)→人在(存在感)→人財(企業の財産)にまで高めること が重要である。そのために企業は人材の育成に多額の資金をつぎ込んでいるので ある。中途採用や転職等で、終身雇用体系が崩れて労働流動性が増したと言われ る時代にあっても、人材育成は企業成長・存続に不可欠な要素なのである。

一方では企業は、グローバル化の厳しい競争を生き抜くために即戦力も求めてお り、個人の自発的投資による自己啓発・自己研鑽でのスキルアップが重要になっ ている。

18.2 人の行動

人間の行動モデルには 2 種類の考え方がある。

現代の組織運営ではY理論に基づいた管理が適している。人間の労働意欲、達成意 欲、協調意欲を引き出すためのインセンティブの工夫が組織として重要となる。

18.3 マズローの欲求理論(欲求階層説)

  1. ①生理的欲求・・・・食欲、睡眠、性欲等の生理的欲求
  2. ②安全の欲求・・・・衣食住に関わる安全の欲求
  3. ③社会的な欲求・・・所属や友人を求める社会的欲求
  4. ④自尊の欲求・・・・自らが他よりも優れていたいとする自尊の欲求
  5. ⑤自己実現の欲求・・最も高次な人間的欲求であり、行動そのものを目的とする絶え間のない動機付けの欲求

18.4 各種インセンティブの例


図18.1 人事勤労制度の枠組み例

18.5 組織形態と組織文化

  1. 組織形態:

    事業部制、カンパニー制、持ち株会社制 等
    さらに内部的に・・・部・課・係制、グループ制、フラット化組織、PJ制 等
    これらの中で、効率的、機動的に動くことができ、迅速かつ正確な情報伝達のできる ことが , 危機管理上重要になる。

  2. 組織文化:

    企業文化、社風とも呼ばれ、これを良い方向(従業員のやる気を引き出して企業価値 を高めること)に持っていくために、さまざまな意識改革が実施される。

18.6 評価項目の例

  1. 資質・能力・姿勢:

    職務知識、企画創造力、理解力、正確さ、迅速さ、折衝説得力、指導力、積極さ、責 任感、役割意識、先見性、決断力、統率力、意欲と勇気、人望、外部指向、コミュニケ ーション、集団親和 等々

  2. 責任遂行度合:

    組織目標の設定、仕事(技術・知識)の組織化、部下の活用・育成、業務の革新・ド キュメンテーション、指揮・統制、技術予測と目標設定 等々

  3. 性格:

    協調性、謙虚さ、明朗さ、綿密性、倫理観、情緒の安定性 等々

  4. 評価の分布例

    特別(目安なし)、抜群(5%)、優秀(15%)、良好(70%)、要努力(1 0%)、例外(目安なし)


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