第17章/中小:中堅企業の戦略

中小企業と呼ばれる業態は家族経営の零細企業を含めて 400 万社から 500 万社 (激減の率が高い)あると言われており、我が国企業の記号実に 99.5 %を占めてい る。

17.1 中小企業とは

  1. 会社の規模(製造業の場合):
    資本金 3億円以下, 従業員 300人以下
  2. 大企業と比べたデメリット:
    資金がない、設備が貧弱、人材が不足
    安定性に欠けた経営
  3. 大企業と比べたメリット:
    意志決定を早くできる
    様々な仕事ができる、
    自分の能力・実績が直に会社の業績に反映する
と言ったことがあげられる。

企業の数は数百万社もあるが、その99.5%以上は中小企業である。しかも 149 万社以上は旧来の有限会社であり、零細企業も多い。

ただ、今や実質的な大企業と中小企業の定義は明確にはなくなっているとも言える。 中小企業でも世界シェア50%以上の会社もあれば、資本金が小さくても利益率の極め て高い会社もある。

ある地域に大企業を誘致することにより、その大企業を支える多くの下請け企業が 集まるので、地場雇用を生み出すことに繋がる。しかし、経済のグローバル化により、 大企業の生産拠点がアジアにシフトしていることは中小企業にとって厳しい環境と言え る。少子・高齢化も人材不足に拍車を掛けている。

17.2 一般的な中小企業

17.2.1 一般的イメージ;

17.2.2 一般的技術革新スタンス:

中小企業が抱える課題を考慮すれば当然の結果と言える。このためにさまざまな中 小企業施策が国や自治体で講じられている。

17.3 大企業に負けない中小企業の戦略

品質面での差別化、コスト面での差別化、事業分野面での差別化、販売方法や納期 等での差別化等が挙げられる。

  1. 市場を細分化する戦略:
    大きな市場を狙わない
    - ◊ 市場規模10億円レベル
    大企業が不得意な製品の生産
    - ◊ 「規模の追求」よりも「きめ細かい対応、柔軟性」
    自社のコア技術の用途開発
    - ◊ 新規市場への参入
  2. グローバルニッチの戦略:
    細分化された市場=隙間市場=ニッチ
    隙間は世界の中で見つけよう
    見つけた市場で圧倒的NO.1へ
  3. ニーズ、ウォンツの徹底発掘戦略:
    顧客は何を欲しているか
    --- ◊ 問題解決の手助けしてくれる人
    痒いところを掻いてあげる
    --- ◊ 相手の気がつかないところを教えてあげる
    マーケッティング力の強化

17.4 きらりと光る素晴らしい中小企業は何が違うのか

17.5 ファブレス中小企業

製品を作っているにもかかわらず工場を持たない中小企業のことで、世界には例が 多い。我が国は大企業の下請け的役割が多かったこともあって少ない。

特に半導体の周辺部品メーカーに多い。生産委託するほうが自前の工場を建てて製造 するより小回りが利くからであり、リスクも小さい。但し繁忙期に自由に主導権を発揮 できないケースもある。

17.6 新規ビジネスへの取り組み事例

17.6.1 スプリングバランサーの新用途開拓

製造会社の工場向けに、スプリングバランサーを製造・販売している企業の用途開 拓の例である。

  1. 取り組みの背景
    従来の生産工場向けの用途だけでは限界がある。全く違った分野に、当社のコア技 を応用できないか。
  2. 時代は、少子高齢化
    福祉・リハビリ分野でのニーズ・ウォンツがないだろうか。

7.6.2 環境機械・破砕機への取り組み

  1. 開発の背景

    金属切断機の先行き見通しの暗さ
          ⇒何か新しいことに取り組まないと厳しい状況になる。

  2. 時代の要請と顧客のニーズ

    地球環境問題の深刻化
    顧客は廃棄物を減らしたいと思っているが、どうし たらよいか分からない。 法律はどんどん厳しくなっていく

  3. 業界の状況は?

    すでに沢山のメーカーがあったが、調べてみると輸入品が多い。意外に隙間がある のが見えた

  4. 当社の実力で勝負できるか?

    構造・油圧・電気等、必要な設計技術は問題なし。
    生産設備は大丈夫。 刃物を作るノウハウは心配ない。

  5. そこで何から始めたか?

    他社の隙間を埋める機種の開発とカタログ作り。 既存の販売網へのPR。

    業界向けのPR媒体捜し。
    イベントへの参加。
    ユーザーからの具体的な引き合いに積極的に取り組んで、販売実績とノウハウ作りを 徹底。

17.6.4 新規市場開拓における重要ポイント

17.6.5 新規事業に適した人材

求めずして思わぬ発見をする能力を磨く。

17.6.6 中小企業が生き抜く道(VBや大企業にも通じるものあり)

17.7 中小企業の課題

一代で築いた中小企業には、後継者に絡む事業継承の問題が大きい。事業資金を創業 社長個人の住宅等を担保に借り入れている場合も少なくない。公私の区別が明確でない 場合もあり、子息が後を継ぎたがらないケースも多い。中小企業の経営が大変なことを 知っている子息ではなく、社内後継者にゆだねる場合も負債を同処理するかは大きな問 題である。第三者に売るか廃業に追い込まれる中小企業も多く、このような事態が、第 1 章でも述べたように、開業率を上回る要因にもなっている。


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