第16章/情報

管理および情報共有

情報化社会の進展は、あらゆる情報が何時でも何処でもリアルタイムに簡単に入 手できる利便性を提供する一方で、本来守られるべき膨大な量の個人情報が、外 部に流出する事件も頻繁に起きている。日常生活への影響だけでなく、社会シス テムへの信頼をも揺るがすものであり、そのための対策(法的、技術的)も打ち出 されている。

一方で企業内情報は企業活動の源泉であり、情報の共有化は最重要課題の一つで ある。有用な情報を共有するさまざまな仕組みも構築されている。

2005年4月1日より個人情報保護の法律が施行され、企業活動にとって 重要な管理項目となった。以下に企業と個人情報管理について解説する。また さまざまな情報管理のためのセキュリティ技術の現状についても紹介する。

16.1 個人情報保護法の構成

個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)

16.2 企業に要求している事項

個人データを過去 6 ヶ月以内に5000件より多く、事業の用に供したことのある、 法人か個人かを問わない者が「個人情報取扱事業者」になる。

企業に要求している内容は、

  1. ① 努力義務(個人情報の管理についての実行努力規定):
  2. ② 同意確保義務:
  3. ③ 義務規定:

16.3 経営情報管理

ITを経営の武器として駆使し、企業価値を高めることを目的として情報管理は重 要である。経営管理手法として以下のようなものがある、

部品メーカーとのインターネットを通じ た図面の共有化や、生産設備の償却費、保守サービスに携わった人件費等を個々の 製品単位で算出・管理できる。


表16.1 一般的な情報の形態
形態 概要 情報の例
紙面の情報 主に紙面に記述された情報で、回覧などによって伝達される 書類、メモ、設計図面、データの出力紙面
口頭の情報 情報発信者から受信者に対して、直接音声で伝達される 会話、放送
電子情報 紙面や口頭の情報を電子化したもので、ネットワークや電子媒体によって伝達される コンピュータの中やネットワークの情報


表16.2 共用DB型情報システム構築の例

771x496(321566bytes)
図16.1 機密情報のやり取りの例
PKI(Public Key Infrastructure)

図16.2 電子証明書と認証局のやり取りの例


表16.3 情報リスク
分類情報リスク具体例
内部の情報
  • 情報の喪失
  • 情報の漏洩・盗難
  • 情報の無断変更
  • 情報の外部への公開
  • 情報の存在が外部に漏洩
  • 情報の誤発進
  • 社内データの破壊
  • 顧客情報の喪失
  • 顧客データ・プライバシー情報の漏洩、盗難
  • 社内データの書き換え
外部の情報
  • 組織にとって都合の悪い情報などの流布
  • 企業批判のホームページ
内部の情報管理機能
  • 管理機能の停止、低下
  • 管理機能の不具合、暴走
  • 管理機能の破壊
  • 管理機能への不正アクセス
  • 管理機能のミス
  • 社内システムの破壊
  • 社内システムの停止
  • 社外サービスの停止
  • 顧客注文処理のミス
  • 不正アクセスの踏み台
  • 受注に関する処理のミス
内部の情報管理機能
  • 取引先の情報処理のミス(特にネットワーク経由)
  • 誤った発注量の受取

16.4 情報共有手段としてのナレッジマネジメント

組織の知的資産を共有・活用し、新たな価値を創造するための手法であり、単な る管理ではない性格のものである。

ナレッジとは価値ある情報のことであり、これを如何にして選別し、使いやすい データとして構築するかがナレッジマネジメントの真髄である。

米国ゼロックスの例が良く引き合いに出される。これは、かつて業績が落込んだ ときに調査した結果、従業員が無駄話をするとの理由でコーヒーコーナーを廃止 したことが原因と判明したというものである。このことにより、日本のQC的発想 だけでは駄目なことが分ったというものである。

ナレッジマネジメント構築には、自主的に知識を表出化する仕掛け(enable r)が必要であり、さらに“暗黙知”の“形式知”化が必要になる。すなわち各人が有している価値ある暗黙の諸々の知識を形式値にすることによって、組織が共有する財産となるわけである。具体的には下記のような手順を踏んで構築する。

暗黙値・・・個人の持っているコツ、ノウハウ
 ↓
表出化・・・ビジュアル化
 ↓ ・選別化・・・情報価値のレベル維持
 ↓ ・形式化・・・マニュアル化
 ↓ ・知識ビジュアル化・・・シェアリング
 ↓ ・誰でも利用可能・・・利用価値の創出・拡大
形式値・・・全員共有の価値ある知識
●ベストプラクティスの収集 ↓ ●新鮮度維持

さらにこれらをベースに、知恵を発揮させることに繋げていく。


図16.3 ナレッジの位置付け

図 16.4 暗黙値から形式値へ

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