グローバル市場での企業活動において、金融、為替は企業収益に直接影響を与える重 要なファクターと言える。
金融とは“資金の融通”のことであり、企業活動においては、資金の過不足を調整する ための貸し借りと言える。個人対象の消費者金融から政府が貸し出す大きな対象までさ まざまな金融システムがある。これらの金融業界を中立的な立場で監督する組織が金融 庁である。
金融には、資金調達方法によって直接金融と間接金融がる。
金の流れと一時的な金の貸し借りは、経済活動を円滑かつ活発にする潤滑剤と言える 。 これら2つの金融がうまく 機能することで、経済活動を促進させることができるので ある。
金の貸し借りには必ず金利というものが付く。貸し借りのリスクに応じて金利水準は まちまちである。一例として消費者金融の金利の推移を見てみよう。
この金利については、 1954年の出資法での上限金利は 109.55 %と、とてつも なく高い金利であった。その後段階的に年 73.1 %、 54.75 %、 40.004 %に下が り、 2000年 6 月から 29.2 %になった。ただこの 29.2 %は「出資法」の定める上 限金利であり、「利息制限法」の上限金利は15~ 20 %と定められている。この20~29.2 %の間の金利のことをグレーゾーン金利と呼んでいるが、この出資法の上限 金利の撤廃が決まった。
預貯金等ではこのような高い金利はほとんどありえないが、グローバルな金融市場 では資金は金利の高い方に流れて行く。世界の金利動向の把握は企業の資金調達にとっ て重要な意味を持っている。ただしイスラム金融では利子(自己増殖の概念)を禁止し ている(後述)。
直接金融による資金調達手段の一つに債券の発行がある。発行された債券の購入者側 から見て、購入・保有が預貯金と異なる点は、元本が保証されていないこと、市場で売 買できることであり、ミディアムリスク、ミディアムリターンの金融商品の位置付けと 言える。
債券は、発行体による投資家への借用証書であり、発行体の違いによって下記のよ うに呼び名が異なる。
国・・・国債、 | 地方自治体・・・地方債 |
特別金融機関・・・金融債、 | 会社・・・社債 |
発行体により利率は固定だが、景気動向により各国の金利は変動するので、債券売 買市場では、当然のことながら、金利が上がって債権の利率より高くなると債券は安く 売買され、金利の方が低くなれば債券は高く売買される。
格付け機関により、発行された債券の元金や利子を、発行時の条件通り返済する確 実性を評価して、それを投資家の投資判断に利用しやすいようにアルファベット等の記 号で表示したものである。一般的には、海外の格付機関のほうが日本の格付け機関より も厳しい(S&P社やムーディーズ社 等)。
一般的に、格付のグレードを、 AAA(トリプルA)、A(シングルA)、BB(ダブルB) といった記号で表わし、 これに1、2、3といった数字や、+、ーといった 記号を付けて表わす。評価ランクは“D”まであり、BB以下は“高利回り債”と呼ばれて いる。信用度が低いほど高い利率を付与しないと、債券を発行しても購入してもらえな いからである。
一般的な目安としては以下のように扱われている。AAA(最上格)~BBB3(あるいは別表示でこれと同等のBBB-)・・・投 資適格
BB1 (あるいは BB +)以下・・・投資不適格(しばしばジャンク債と呼ばれ、 区別されている)。
発行体はできるだけfコストを掛けないで資金調達したい、投資家はできるだけ利 益を上げたいという互いに利益が相反する貸し借り関係にあるので、リスク回避の手立 ても重要である。債券リスクとしては、金利変動、信用性リスク、流動性リスク(低流 通量)、イベントリスク (突発事態)等がある。
外為(がいため)とも略される。通貨が異なる国際間の貸借関係を、現金を送付せ ずに、手形や小切手などを使って、振替決済する方法であり、この時に用いられる通貨 間の交換比率が外国為替相場である。
基軸通貨はあくまで米ドルであるが、近年ユーロも米ドルの受け皿としての第 2 基軸通貨になりつつある。ただユーロの推進力は、1/3 を占めるドイツ一国の経済の 寄与に負うところが多いので問題もある。
米ドルが基軸通貨なので、たとえば豪ドルと日本円の交換レートは以下のように計 算で算出されることになる。
一例として数値を入れてみると、 1豪ドル= 0.69 米ドルで、1 米ドル=118円の場合は 1豪ドル= 0.68×118 = 79 円 と算出される。ユーロと日本円は元より、 他の外国通貨との交換レートも、全て米ドルを介して計算される。
取引市場は、下記のように 24 時間シームレスで開かれている。
ウエリントン → シドニー → 東京 → (香港→フランクフルト) → ロンド ン(全市場の 30 %がここに集中する) → ニューヨーク。
為替市場の一日の取引規模は約 2 兆ドルであり、そのうち 1/3 が米ドル、 20 %がユーロ、 10 %が日本円で、その他英ポンド、豪ドル、 NZ ドル、加ドル他と 続いている。
為替相場には、主に市場需給関係からレートを決定する自由為替変動相場制(フロ ート制)と固定為替相場制(ペッグ制)がある。固定為替相場には特定の通貨にのみ連 動して変動するものと、複数の通貨に連動するものとがある。通貨バスケット制はこの 複数の通貨に連動させた、為替相場制のことである。
ドルに連動させたものをドルペッグ制と呼ぶ。ドルペッグとは、自国の通貨レート をドルに連動させる固定相場制度のことを言う。ドルに対しての為替レートは安定し、 貿易や投資を円滑に行なうことができる。ただし、通貨レートを維持するために米国の 金利政策に追随しなければならないというデメリットがある。ペッグ制は、経済基盤の 弱い国が、自国の通貨レートを経済的に関係の深い大国の通貨と連動させて、経済を安 定させるために用いられる。
これに対して通貨バスケット制とは、主要通貨で構成するバスケットと自国の通貨を 連動させる制度のことである。通常は、米ドル、ユーロ、日本円などを軸にバスケット を構成していき、貿易額や資本取引の動向を勘案して為替レートを決定していく。例え ば、円をドル 50 %、ユーロ 50 %のバスケットに連動させたとすると、ユーロがドル に対して 1 %上昇しても、円はドルに対してこの半分しか上昇しないことになり、受 ける影響範囲を小さくすることができる。
通貨バスケット制は、ロシアや中国で導入されていて、為替レートが安定するという メリットがあるが、レートの決定が複雑である上、レート決定の透明性が低いという問 題点が指摘されている。
デリバティブとは伝統的な 金融取引( 借入、 預金、 債券売買、 外国為替、 株式売買 等)から相場変動によるリスクを回避するために開発された 金融商品の総称である。日 本語では金融派生商品という。 デリバティブ(derivative)は、「誘導的な」「派生 した」という意味である。デリバティブ取引の特徴として次のことがある。
デリバティブはレバレッジ効果を有するため、たびたび投機的な運用資産として、 多額の損益を生じ、問題となっている。英国のベアリング社や米国のオ レンジ州など、 運用セクションによるデリバティブの運用の失敗により、企業の存続に大きな影響を与 える事件は後を絶たない。現在では、多くの会社ではデリ バティブへの投資に対して、 リスクをモニタリングする仕組みが導入されている。銀行業の場合は、 BIS 規制や金融 検査マニュアル等でそのデリバティブの運用に対する体制整備が求められている。
ヘッジ取引とは
先物価格が現物価格と連動した動きをする性質を利用して、現物市場と反対の取引を先物市場で 行うことによって、価格変動によるリスクを抑制または排 除することができます。このような目的 の取引を「ヘッジ取引」といいます。ヘッジ取引の基本的なメカニズムは、現物市場で発生する損益 を先物市場で発生す る損益で相殺するところにあります。ヘッジ取引を行うことによって、その後 、 価格がどのように変動しても、ヘッジ取引を行った時点の価格で、将来の購入価 格または売却価格 を確定することが可能になるのです。
買いヘッジの具体例現物の売り約定をした者が、その値上りにより損失を補うため、先物市場において 買いつけることをいいます。買い付けを予定している場合、今後の価格 変動(特に値上が り)に係わりなく、現時点での先物価格で商品を手当する目的で用いられるのが「買いヘッ ジ」です。現時点で将来の買い付け数量に相当する 先物の買いポジションを建てておき、将 来、現物の買い付けを行うときに、この先物の買いポジションを転売によって決済する方法が 一般的です。
こうしたオペレーションによって、実際に価格が上昇した場合には、現物取引ではコスト上昇 が生じますが、先物取引では利益が発生するので、先物取引の利益で現物取引のコスト上昇を 相殺できる訳です。
逆に、価格が下落した場合には、先物取引では損失が発生しますが、現物取引ではコストをお さえるので、先物取引の損失は現物取引のコスト低減で相殺されることになります。
後者の場合、「ヘッジしなければ現物取引(値下がり)の利益を享受できたのに」という意見 が後から出ることが多々ありますが、買いヘッジの目的はあくまで、ある時点の価格で将来の 商品の調達費用を確定する点にある訳ですから、これで目的は十分に達成されているのです。
具体例として、ある商社が金地金を半年後に10キログラム調達して、メーカ ーに納入しなければならないケースを考えてみましょう。今現在の金価格は 2,000円/グラム ですが、納入価格は2,100円/グラムで、実際に金地金を納入するのは半年後だとします。 金地金の価格がずっと 2,000円/グラムのままであれば、このビジネスは十分採算がとれる (100円/グラムつまり 10 キログラムで100 万円の利益が得られる)のですが、半年後には 金価格は採算のとれない水準まで上昇してしまうかもしれませ ん。かといって今から金地金 2,000 万円もの資金を半年間も寝か の現物を 10 キログラム購入して半年間保管するのでは、 せておくことになりますし、また 地金の保管費用も無視できません。そこで、現時点におい て 10 キログラム分相当の金先物のポジションを買い建てておくのです(以下では先物価格と 現物価格 は同じ動きをすると仮定して、 2,000円/グラムで先物の買いポジションを建てた 2,500円/グラムに値上がりした場合には、どのよとします)。 このとき、半年後に金価格が 2,500円/グラムで金地金10 キログラうになるでしょうか。 ヘッジをしていなければ、時価 ムを調達して、当初の約束の2,100円/グラムで納入しなければならないので、 現物取引に係る手数料等を無視しても、400円/グラム、つまり 10 キログラムで400 万円の損失が発生 してしまいます。しかし2,000円/グラムで買い建てた先物ポジションは、先物価格も現物価 格と同じような動きをするので、その先物価格も 2,500円/グラムあたりまで上昇している はずです。したがって、この買いヘッジのポジションを転売して差金決済すれば、 500円/グラム(=2,500円/グラム-2,000円/グラム)、つまり10 キログラムで500 万円の利益 が先物市場から得られることになります。こ の先物取引から得られた利益 500 万円で、現物 100 万円の利益(当初の思 取引で発生する損失400 万円をカバーすれば、差し引き全体として 惑通りの利 益)が確保されたことになります。
反対に、半年後、金価格が 1,500円/グラムに値下がりした場合には、先物取引で は 500 万円(= (1,500円 /グラム- 2,000円/ グラ ム )×10 キログラム)の 損失が発生しますが、現物取引では 1,500円/グラムで調達して 2,100円/ グ ラムで納入すればよいので、 600 万円(= (2,100円 /グラム- 1,500円/ グラ ム )×10 キログラム)の利益を上げることができます。全体としては差し引きで、こ の場合もやはり 100 万円 の利益が確保されたことになります。
ある商品を保有しており(または将来確実に入手することになっており)、将来時 点でその商品の売却を予定している場合に、今後の価格変動(特に値下 がり)による損失を 回避するため、現時点での価格で将来の一定期日に商品を売りたい場合に用いられるのが、 「売りヘッジ」です。現時点で将来の売却数量に 相当する先物の売りポジションを建ててお き、将来、現物の売却を行うときに、この先物の売りポジションを買い戻しにより決済する方 法が一般的です。
こうしたオペレーションによって、価格が下落した場合には、現物取引においてはコス ト増が生じますが、先物取引では利益が発生するので、先物取引の 利益で現物取引の コスト増を相殺できる訳です。 反対に、価格が上昇した場合には、先物取引では損失 が発生しますが、現物取引においては利益が生ずるので、先物取引の損失は現物取引の 利益で相殺できる訳 です。
後者の場合、「ヘッジしなければ現物取引(値上がり)の利益を享受できたのに」とい う意見が出ることが多々ありますが、ここでも売りヘッジの目的はあくまで、ある時点 での価格で将来の商品の売却収入を確定する点にあることを再度確認しておきます。
売りヘッジの具体例:ある鉱山会社が自社生産の金地金を半年後に 10 キログラム、 そのときの市場価格で商社に販売する契約を結んだケースを考えてみましょう。ここで この鉱山会 社の生産採算価格は 1,800円/グラムだと仮定します。今現在の金の市 場価格は 2,000円/グラムですが、実際に金地金を渡すのは半年後だとします。 金 地金の価格がずっと 2,000円/グラムのままであれば、このビジネスは十分採算が とれる( 200円/グラムつまり 10 キログラムで 200 万円の利益が 得られる)の ですが、半年後には金価格は採算のとれない水準まで下落してしまうかもしれません。 そこで、現時点において 10 キログラム分相当の金先物のポ ジションを売り建ててお くのです(先物価格と現物価格は同じ動きをするという仮定にしたがって、 2,000 円 /グラムで先物の売りポジションを建てたとし ます)。
このとき、半年後に金価格が 1,500円/グラムに値下がりした場合には、どのように なるでしょうか。ヘッジをしていなければ、採算価格が 1,800円/グラムの金地 金を 1,500円/グラムで 10 キログラム販売しなければならないので、現物取引に 係る手数料等を無視しても、 300円/グラム、つまり 10 キログラムで 300 万円 の損失が発生してしま います。しかし 2,000円/グラムで売り建てた先物ポジショ ンは、先物価格も現物価格と同じような動きをするので、その先物価格も 1,500円/ グラム あたりまで下落しているはずです。したがって、この売りヘッジのポジション を買い戻して差金決済すれば、 500円/グラム(= 2,000円/グラム- 1,500 円 /グラム)、つまり 10 キログラムで 500 万円の利益が先物市場から得られるこ とになります。この先物取引から得られた利益 500 万円で、現 物取引で発生する損 失 300 万円をカバーすれば、差し引き全体として 200 万円の利益(当初の思惑通り の利益)が確保されたことになります。
反対に、半年後、金価格が 2,500円/グラムに値上がりした場合には、先物取引で は 500 万円(= (2,000円 /グラム- 2,500円/ グラ ム )×10 キログラム)の 損失が発生しますが、現物取引では 1,800円/グラムが採算価格のところ 2,500 円 /グラムで販売できるので、 700 万円 (=(2,500円 /グラム- 1,800円/ グラム )×10 キログラム)の利益を上げることができます。全体としては差し引きで、 この場合もやはり 200 万円の利益が確保されたことになります。
ここまでは先物価格と現物価格が同じ動きをすることを前提に、差金決済を利用したヘッ ジ取引を例にとって説明してきましたが、実際には先物価格と現 物価格がまったく同じ動き をするとは限りません。こうしたベーシスリスクが発生している場合には、ヘッジ目的で建て た先物ポジションを差金決済せずに、そ のまま受け渡しをしたほうが有利な場合も少なくあ りません。その時々の価格推移を見たうえで適切に判断してください。
一言で言えばオプションとは、ある商品を一定の期間内に、決められた価格で「買 う」又は「売る」権利のこと。 特定の期日に、特定の売買を行う権利。なにかを「買 う」権利をコールオプション (call option) 、 「売る」権利をプットオプション(put option) と言う。 「買う」権利を買う、「売る」権利を買うとはすなわち、代金 (プレミアム)を支払って、特定の証券(原資産 、underlying asset )を特定の価格(行使価格、strike price)で行使期限内に買う、または売る権利を得ることで ある。権利であるので放棄も可能であり、自分に有利な場合のみ行使することができる 。 権利を売るとはすなわち、プレミアムを受け取るかわりに権利の買い手に対して義務を 負うことである。
●例えば、現在人気があって品薄気味の 40 万円の超薄型TVを数ヵ月後に 30 万円 で購入する権利を 5 万円で購入したとする(買方は品薄になって価格が上昇すると予 想している)。数ヵ月後に例えば大増産して逆に 34 万円まで下がってしまったとす る。差し引き1 万円の損になる。ただ 30 万円を切った場合は権利を放棄して、その時 の価格で購入したほうが特になる。ただし5 万円は戻ってこない。もし逆に価格が上が れば権利行使で益々有利となる。売る場合はこの逆になる。
裁定取引(さいていとりひき、英語: arbitrage position )とは、金利差や価格 差を利用して売買し利鞘を稼ぐ取引のこと。
例えば東京で薄型TVが 16 万円で売られているものが、大阪で 8 万円で売られ ていたとする。東京の業者が輸送費を掛けても大阪から仕入れて東京で売ったほうが儲 かる。
イスラム金融とは、イスラム法に則った金融取引・サービスの総称のこと。イスラ ム教の聖典「コーラン」等の教えにもとづき、金利の受け払いや反道徳的な事業への投 融資の禁止などの特徴がある。
原油価格の上昇等により、湾岸産油国の石油収入が増加し、資産運用ニーズが高まっ ていること、そして一方で、中東におけるインフラ・プロジェクトが増加し、資金調達 ニーズも高まっていること等より、近年「イスラム金融」が注目されている。
イスラム教の聖典「コーラン」等の教えにもとづき、以下のような特徴がある。