第10章/顧客満足と顧客サービス

CSとCSでロイヤル(忠誠)顧客の創造・維持・拡大へ

顧客満足(Customer Satisfaction)も顧客サービス( Customer Service ) も,英語頭文字での略記はいずれも同じ“ CS”であるガ,前者が後者を包含する位置付 けである. お客様を満足させるには、下記に示すようにそれ相応の仕組みが必要である.

――――――――――――――→ 営業 ―――――――――――――→
企画  ↑ 顧客の声を聞いて改善・改革  顧客の声を反映した商品提供 ↓
開発 →                              顧客 ⇒ ※
生産  ↓ 顧客の声を聞いて改善・改革  顧客の声を聞いて改善・改革 ↑
――――――――――――――→ サービス ―――――――――――→

※ ⇒ “満足,喜び,感動” ⇒ 「ロイヤル顧客の獲得」.

このように,たえず顧客の声を営業,サービスを通して企画・開発・生産側にフィ ードバックし,さらによりよいものにして顧客に提供し続けることが,ロイヤル顧客の 創造・維持・拡大に欠かせない.

10.1.1 顧客の商品評価

  1. お客様は二度評価する

    顧客視点からの評価は,“欲しい”という購入時の魅力度合いと,“買ってよかった”と いう,購入後使用時の満足度合いである.したがって購入時の魅力度が大きく,使用時 の満足度も大きければ当然大ヒットにつながるし,いずれも小さければ鳴かず飛ばずの 結果となろう.しかし,実際にはそう話は単純ではない.

  2. 実はお客様は三度評価する

    実は修理時の評価が大きいのである.定期的な保守・点検はもとより,いざ故障し たときの修理サービスの対応の良し悪しが,決定的な評価になるケースが少なくない.

受付対応      ――――――
サービスマンの対応・技術    ↓⇒ リピートオーダー
修理期間・修理料金       ↑⇒ (ますます信頼の増大につながる)
修理後の具合など  ――――――

もちろん,故障はあってはならないことだが,アフターケア体制の充実化が,ロイ ヤル顧客の創造・維持・拡大にきわめて大きな役割を担っている.コールセンターの重 要性が増す理由であり,IT技術を駆使したCRMの構築は必須といえよう.

CSとカスタマー・ロイヤルティ

利益を決めるのはシェアではなく,カスタマー・ロイヤルティである.そのためには , カスタマー・サティスファクションを高める必要がある.

10.2.1 CSはES(従業員のサティスファクション)から生まれる

下記のような状況がある.

  1. カスタマー・ロイヤルティをどうやって測定するか

    “カスタマーの価値 =(カスタマーにとっての「結果」+サービス提供のプロセスのクオリティ)/ ( 売価+入手コスト)“ で評価される.

    実際には分子を高め,分母を極小にするさまざまな手段が取られる.

    これには次の三つの“R”がキーワードになる.

    1. ①カスタマーの保持(Retention)
    2. ②関連販売(Related sales)
    3. ③口コミ(Referrals).
    したがって,カスタマーにとっての生涯価値を測定することが必要になってくる.こ れをつきつめることが,真のカスタマー・サティスファクションにつながるのである.

10.2.2 顧客全員への公平サービスは成績を悪化させる:

顧客全員への公平なサービスは,コストもかかるし無駄も多いことがわかっている. したがってカスタマーの峻別を考慮した,総合的な戦略に基づくカスタマー・サティス ファクションの構築が重要となる.下記分類を戦略的に利用することが,顧客獲得の鍵 である.

  1. カスタマーの分類

図 10.1 に,競争の激しい業界での顧客満足の程度とロイヤルティの関連度を示す.


図10.1 満足度の程度とロイヤルティの関連

10.2.3 カスタマーに耳を傾ける際には

カスタマー調査では,

といったことが重要である.

10.2.4 カスタマー・サティスファクションをどう考えるか

「伝道者」と「テロリスト」は他人にプラスとマイナスの両極端の話しをしている わけであるから,

の二点に尽きる.

新規カスタマーを狙うには,既存のカスタマーを維持する数倍から5倍ものコスト がかかることになるのである.いったん離れたカスタマーを呼び戻すのは至難の技であ る.それだけCSは重要なものである.

また,一人の顧客の苦情には,実はその背後に何百人,場合によっては何千人もの 同じような苦情が存在していることを認識しなければならない.これは苦情のピラミッ ドとも呼ばれるものであり,現場のサービス担当に入った多くの苦情情報が,会社の上 部組織に伝達されるたびに減っていく現象である.一つの苦情の裏には何十倍、何百倍 もの不平・不満が潜んでいるのである.

これは危険予知の“ヒヤリ・ハット”の奥に潜む,重大危険の可能性にも似たものと いる.

順番待ちに我慢させる8原則

ディズニーの順番待ち行列の原則は以下のようなものである.

  1. 何かしている時間より,何もしていない時間のほうが長く感じる.そこで,縫いぐ るみを着たキャストによる客を楽しませる工夫をする.
  2. 行列が動いているときより,止まっているときのほうが長く感じる.そこで,行列 の後に人を出してサービスをする.
  3. たとえば医者の順番待ちは長く感じるが,何か心掛かりなことがあって順番を待っ ているほうが長く感じる.そこで,現実の世界から離れた楽しい世界を演出する.
  4. いつまで待てばよいのかわからないほうが,わかっているより長く感じる.そこで ,待ち時間を知らせる.
  5. 解説なしの順番待ちのほうが,解説つきの場合より長く感じる.そこで,タイムリ ーにわかりやすい簡潔な解説を流す.
  6. 不平等な順番待ち行列のほうが,全員平等な順番待ち行列より長く感じる.そこで ,順番をきちんと皆にわかるように整列させる.
  7. サービスの価値が高ければ高いほど,カスタマーは長い時間を我慢する.そこで, 状況に応じてサービスを変えて対応する.
  8. グループで順番を待つより,一人で順番を待つほうが長く感じる.そこで,一人待 ちに対するサービスに注意を払う.

この例から,お客様の立場になって考えることの重要性が理解されよう.CSはまさ にお客様との接点なのである.


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